Re: re:




いつものように朝起きて、
いつものように支度する。

いつものように部屋を出て、
いつものように廊下を歩く。

「おはようございます。隊長」

「あぁ、おはよう」

廊下で会った隊員に
いつものように挨拶して
いつものように執務室に入る。

いつものように机について
いつものように仕事をする。

「おはよ〜うございますっ隊長vv」

「一時間の遅刻。減給もんだぞ」

いつものように遅刻してくる副官。

「女の子はいつでも朝は大変なんですよ」

いつもと同じ言い訳にいつもと同じ溜息をつく。

そしていつもと変わらず反省の色を見せない。
そんな副官は放っておいて自分の仕事、もとい十番隊の仕事を進める。

「冬獅郎vv」

するといつものように現れる奴。
狐顔の変態、三番隊長の市丸ギン。
俺の、まぁ…恋人って奴だ。

「何しにきた?まだ本日の勤務時間はに時間しか経っていないが?」

「何言うてるんvv冬獅郎に会いに来たに決まってるやん」

これもいつもと同じ会話。
よくもまぁ、市丸も俺も飽きないよな。
本日二回目の溜息をつく。

松本はいつの間にか仕事を放り出してサボりに出やがった。
いつもの事だ。

いつものように市丸を向かいのソファに座らせる。

「俺の顔見て楽しいのか?」

「可愛えぇもんは何時見ても飽きひんもんやでv」

こいつの気持ち悪いニヤケた顔はいつも通り健在のようだ。

「なぁ、お腹空かん?僕朝ごはん食べてないんよ。やから早めに食堂行って二人きりで昼ごはん食べよ?」

いつも二人きりで食べてるじゃねぇかよ。昼も夜も。

けど市丸といると、何故かいつも安心する。

「仕方ねぇな」

結局いつもと同じ返事を返した。

がたり、と椅子から降りて市丸の元へ。
市丸もソファから腰を上げて俺の元へ来る。

「何食べる?」

食堂についてから、俺は席取り、市丸は注文を。

「ん〜唐揚げ定食といつものやつ」

「了解や」

「いつものやつ」とは俺が飽きずに食べているもの。
甘納豆。菓子だが俺はいつもご飯の後に食べる癖がついている。
所謂、別腹ってやつだ。
食堂のおばちゃんが特別にメニューに入れてくれたんだ。

「お待たせ〜」

いつものように市丸は俺の分と自分の分を器用に持って俺の前に定食を置く。

「「いただきます」」

いつものように残さず食べる。
身長を伸ばす為だ。


「ごちそうさま」

市丸はいつも俺より先に食べ終わって俺を見てやがる。

「なんでお前はいつも食べるの早いんだよ?」

「早く食べ終わって冬獅郎の顔見る為やよ?」

「ふ〜ん…」

そんな言葉、よく大勢のいる場所で言えるもんだな。

「ごちそうさまでした」

市丸の見ている前で食べるのもいつもの事で。
最初は戸惑ったが今では戸惑いも何もない。

「さぁ〜て、仕事するか…」

軽く伸びをして、席を立つ。
いつものように市丸に食器を持っていってもらう。
というか、いつも市丸が俺の分をちゃっかりと戻してやがる。

いつものように二人で廊下を歩き、冷たい風が二人の頬を掠める。
いつものように俺は執務机につくが、市丸は当たり前のようにいつもと同じソファに座る。

いつものように「仕事しろ」と怒鳴るが市丸は聞く耳持たず。
結局いつものように俺が先に折れてしまい、市丸はずっと十番隊に居座る。
いつもながら副官の吉良はかわいそうだ。


カチカチと時計が秒を刻む音。
サラサラと書類が捲れる音。


「松本乱菊、唯今もどりました〜vv」

「……長い休憩だったな。もう終業三十分前だ」

いつもこの時間に帰ってくる松本は一体今まで何をしていたんだろうか。
いつも思うが、松本がいないお陰で市丸と二人きりでいられる時間は増えるのは事実で。
少しの感謝はある。が、多少仕事はやってほしい。

「乱菊、後は君一人でやっといてや」

「何よ〜、いつもは手伝ってくれてるじゃない。今日は手伝ってくれないの?」

そう、いつも終業三十分前に帰ってくる松本の仕事は市丸が手伝ってくれているのだ。
俺に負担をかけないようにという配慮らしいが、それなら自隊の仕事もしてこい。

けれど今日はいつもと違った仕事の終わりだった。

「今日はダメや。冬獅郎、行くで。」

「は?何処に…」

いつものように松本の仕事を終わらせて帰るのではなかった。

「何処って、僕の部屋」

今日はいつものようにはいかないらしい。
それが何故かはまったくわからなかった。

「まだ仕事…」

「冬獅郎の分は終わったんやから後は乱菊やろ?自分の分は自分で片とつけんとな。それに今日は特別なんやから」

そう言って、俺の腕を引っ張っていく市丸。
俺は連れられるままに市丸の部屋へと向かうことになった。


「なぁ、今日なんかあるのか?」

「今日、冬獅郎の誕生日やんか。忘れてたん?」

「いや、それは覚えてたけど…」

誕生日といっても長い年を生きている俺たちには有り難くもなにもない。
けど市丸は違うみたいで特別な日として扱っているらしかった。

「ほら、誕生日プレゼント」

「あ、ありがと…」

綺麗に包装された袋には何が入っているかわからない。
包装紙を剥がそうとすると、その手は市丸に止められた。

「開けるんは、一人の時にしてや」

「何が入ってるんだよ?」

「秘密。開ければすぐわかるよ」

そう言って市丸は俺を箱ごと抱きしめた。


その日、俺と市丸は一夜を共にした。
市丸から貰ったプレゼントを開けたのは次の日の朝だった。
市丸が起きる前の朝。

「……携帯、電話?」

伝令神機と使い方は変わらないから大体は知っている。

けれど唯一携帯電話にはあるもの。
手紙のように文字で話せるメール。
この使い方はよくわからない。
けれど、受信ボックスに一件未読メールが入っているらしい。
そのメールはすぐ横で寝ている市丸からのもので。

『日番谷冬獅郎を愛します』

一言、いつも言われている言葉。
それなのに何故か初めて言われた気分になって。

普段、素直に言えない気持ちをそのメールに返信した。

『俺もだ、ギン。愛してる

>
>>日番谷冬獅郎を愛してる』

絵文字も何もないメールだけれど、この気持ちはすぐに伝わる。

送信ボタンを押すと、市丸の頭の直ぐ横から音が鳴った。
その音で市丸は目を覚ました。
まだ眠たそうな目をして、隣に俺がいるのも気付いていないらしい。

市丸がそのメールを見て。
俺は横からそっと市丸の頬にキスをした。
そしたら市丸はビックリした顔をした。

「可愛い過ぎや、冬獅郎」


その日以降、市丸からのメールは何分置きかに入ってくる。
最初はちゃんと返信していたけれど、仕事中にまで来るものだから正直鬱陶しい。

けれど市丸は構わずメールを送ってくる。
お陰で俺の受信ボックスは市丸のメールで埋め尽くされている。

消す事だって出来るけど、それはしない。
一番最初のメールにはしっかり保護マークをつけて。


気が向いたら返事をしよう。

今日から少し変わった日常が始まる。


「Re:」





END 07.12.20