希望と優しさの光は輝き続ける Hope and the light of the gentleness continue glistening
産まれてきてごめんなさい。
迷惑かけてごめんなさい。
俺はイラナイ存在。
朝から家の中で俺は叩かれる。
最近では痛みなんて感じない。
いや、感じてるのかもしれないが感じたくない。
「あんたなんか産まれて来なければよかったのよ!!そんな髪で目で、化け物扱いされるのは私なのよ!!」
だからいつだって謝ってるじゃないか。
『ごめんなさい』と
俺の髪と目は生まれつき。
髪は銀髪。目は翡翠色。
これのせいで世間からも親からも化け物扱い。
「っ……」
口の中が切れた。
けど、最近は食べ物もろくに与えられない。
何日も食べないときだってあった。
口から血が流れようと、俺の親は叩く事を止めようとしない。
肌を叩く音と、母親の叫び声だけが部屋に響く。
俺は泣かない。
いつからか泣けなくなった。
泣いても変わりないと知ったから。
「あんたなんて、あんたなんて!!私の子じゃないわ!!」
そして母が取り出してきたのは刃渡り20センチ程の包丁。
この時だけは恐怖が頭を支配した。
「死んじゃえばいいのよ…!!」
振り下ろさせる包丁を必死に避ける。
けれど狭い部屋の中では逃げ場なんてない。
何度か切りつけられた。
一番深いのは腹に突きつけられた傷かもしれない。
母は何度も俺に包丁を振りおろした。
傷は数えきれないほど。
でもまだ息はある。
逃げられる。
必死に玄関まで逃げて、外に飛び出した。
血だらけのまま、裸足のままで。
外は土砂降りの雨で。
行く宛先なんて何処にもない。
ただ、母親から逃げたかっただけ。
「はぁ、ハァっ…、ぅ…」
不意に力が出なくなった。
それも当たり前かもしれない。
出血多量。
呼吸困難。
体温低下。
ここまで逃げてきたのに、死んでしまうのか。
結局は母に殺される始末。
滑稽だな。
そのまま俺は静かに瞼を落とした。
いや落とそうとしたんだ。
けど、暖かい何かに包まれた。
「ちょお、君、しっかりしいや!!」
次いで聞こえてきたのは京都弁の訛りがある声。
まだなんとか開いている目で見たその青年の髪の色は銀髪だった。
何故か安心感を覚えて、その青年の服を弱い力で握り締め意識を落とした。
***
「ん…」
目を開ければ白い天井。
「気ぃついた?」
横を見れば銀髪の背の高い青年。
倒れる前に見たあの青年。
「あ、…っ」
俺は急いで起き上がろうとしたが、腹の激痛で無理だった。
「無理したらあかんよ。君、道端で倒れてたんやで。覚えとる?」
はっきりと覚えている。
母親から逃げてきたこと。
「君の家に連絡入れよ思ったんやけど、君の名前も何も知らんから。君、名前は?」
「………」
親に連絡したって意味がない。
俺がその家から逃げてきたんだから。
「あぁごめんな。最初に僕の名前言わなあかんかったね。僕は市丸ギン言うよ。」
「俺は、冬獅郎…」
青年、市丸ギンにはなんとなく安心感があった。
「…君、虐待されてるやろ?」
市丸の言葉に耳を疑った。
「虐待…、なんて…」
母をかばうつもりなんて全くない。
自分が愛されてない事を知られたくなかっただけかもしれない。
「嘘言うたらあかんよ。ここの病院な、僕の友達の親父さんがしてるとこなんや。君の体の傷を見て確信しとったわ」
「……俺は、産まれてはいけない存在だったんだ。この髪と目の色だけで親から化け物扱い。ここまで生きてこれたのが奇跡に近いんだ。食べ物だって与えられなかった。外に出て、落ちてる物を食ったりしたこともあった。家に帰れば、八つ当たりのように殴られた。灰皿のように、煙草を押し付けられたりもした。自殺も考えた。けど、それは親が許してくれない。親は自分の世間体だけを気にしてたんだ。」
知らずの内に俺の目からは涙が頬を伝っていた。
久しぶりに出た涙を止める術なんて知らず、涙はとめどなく流れた。
ふっと人の体温を感じた。
それは市丸の体温。
市丸が俺に抱きついてきた。
「泣いても、えぇで。思う存分泣きや」
「っ…、ふ……」
俺は誰からも与えられなかった暖かさを手に入れた気がして、市丸の胸で声をあげて泣いた
***
「市丸。そいつ、どうだ?」
「あぁ黒崎。虐待はされてたみたいやで。病院閉まっとるのに診てくれておおきにな」
「そりゃ親父に行ってくれよ。大体、そんな傷だらけの子抱えて来て、診ないってのがおかしいぜ?」
「そやな。けどおおきに。…なぁ、黒崎。この子、僕が預かってえぇ?」
「お前が?育てきれるのかよ?」
「帰る家が無い子をほったらかしにするわけないやん。それに何や親近感湧くねん。」
「同じ銀髪だからか?」
「そうかもしれへん。ただ、この子が必死に僕の胸で泣いとった。この子にとっても僕は力になれると思うんや」
「ふ〜ん、けどその子の親には?」
「虐待されとるのに、戻すわけないやん。」
***
遠くで何かが光った。
今まで見えなかったもの。
優しさの光が。
希望の光が。
やっと降り注いだ。
「起きた?」
「ここは…?」
見渡せど知らない景色ばかり。
先程まで病院にいたはず。
「僕の家やよ。あ、僕の名前覚えとる?」
「…市丸、ギン。」
「よかった〜忘れられたらどうしよ思ったわ。僕ん事はギンって呼んでな」
終始笑顔の市丸に俺はどうしていいかわからなかった。
なぜ、市丸の家にいるのかも。
「僕が君を引き取ったんよ。これからは一緒に暮らそうな。冬獅郎」
急に言われても訳が分からない。
けど、市丸と暮らすということはもうあの家に戻らなくてもいいという事。
これが、
希望の光
なのだろうか
大体見知らずの子供を引き取るとはどうかしている。
「なんで、冬獅郎を引き取ったんか不思議に思ってるやろ?」
「え?」
「冬獅郎の家庭事情とか色々調べさせてもらったんや。」
調べたからといって何で俺を引き取る事に繋がる?
俺に同情したのか?
「で、色々調べた結果。冬獅郎は僕の弟やねん」
「おと…うと?」
「そうや。僕も虐待されてたわ。あの母親に。今は逃げて一人暮らししとるんよ」
弟ということは
市丸ギンとは血が繋がっていて
俺の、兄貴?
そう言えば殴られている最中に母が言っていた覚えがある。
「なんで私が産む子はこうなるの?」と。
それは今まで俺が産まれる前にも子供を産んでいたと言うこと。
殴られている最中はそんなこと気にする余裕も無かったが。
「おにいちゃん?」
「ギンでえぇよ。今更やから」
安心感が持てたのも納得する。
「ぅ…、ふっ…ヒクッ…」
「ほらほら何で泣くんや。」
そんなこと言ってるけど
俺を広い胸で抱き締めてくれる
これが
優しさの光
***
そして、数年後
「ギン、シよ?///」
「えぇよ。」
俺を引き取ってくれたギン
今は二人で、もとの家から離れた所で暮らしている。
そして、兄弟では有り得ない関係までいっていた。
体の関係。
でも、幸せなんだ。
「ん…、ぁ…ギ、ン…っ」
「冬獅郎ん中、締まって気持ちえぇよ…っ」
イラナイ存在と思っていたけど
ギンが変えてくれたんだ
ギンが
俺の
光なんだ
ずっと、側にいて輝いて、俺を照らしてくれている光
「ギン、ありがとう。大好きだよ」
END
07.08.26