一目惚れ Love at first sight




「僕は君に一目惚れしてもうた。」


本日、高校入学式。
新しい制服に身を包み、新しい靴を履いて日番谷冬獅郎は男子高に入学した。

「皆高ぇ…。前見えねぇし」

高校生といえば皆、身長が低くても150以上はある。
しかし、そんな風に育たなかった日番谷は今現在133しかない。
普通に皆と同じ食事をして、同じ運動をしてきたのに遺伝のせいか身長が皆より断然低い。

「一体俺は何処のクラスなんだ?」

「君のクラスはB組や」

「へ?」

突如後ろと言うか真上から聞こえた声に振り返れば、同じ銀髪をした長身の男。

「B組。」

「あ、ありがとうございます…。あの…」

「僕は2年の市丸ギン言うよ。冬獅郎くん」

「なんで俺の名前を?」

初対面の筈だ。
滅多にいない同じ銀髪の人にあったらイヤでも記憶の片隅には残ってる筈。

「あれ?忘れてしもたん?君が中学ん時会ったんやけどな」

そんな記憶、日番谷には一切ない。
何処かで会ったのだろうか全く覚えていない。

「まぁあんときは君弱ってたから…。」

「………あっ!!もしかして、あの時ってあの時?」

中学生の体育祭の途中で、熱射病により倒れた時があった。
その時、誰かが支えてくれた気がしたが生憎そんな事など考える余裕もなく気を失ってしまった。
気が付いたら保険医の先生以外誰もいなかった。
先生が言うには、高校生のお兄さんがここまで運んでくれたと言っていた。
その高校生のお兄さんが今目の前にいる市丸という人。

「あの時はありがとうございました。」

軽く礼をして市丸を見れば終始ニヤニヤしている。

「えぇよ、えぇよ。ここの体育祭でも気を付けてな。」

「はい」

いい先輩に出会えて良かったと日番谷は思った。
これなら難無く高校生活をおくれそうだ。

「あ、そうや。僕、君に一目惚れしてもうたみたいや」

「は?」

「君を一目見たときからずっと君の姿が放れんのや。まさかこの高校に入ってくるとは思わんかったんやけど」

淡々と話す市丸に驚きを隠せないでいた。

「僕、頑張るな。君を振り向かせて見せるわ」

ただジッと市丸が去っていく方を見ながら、頭の中は先程市丸が言った言葉で一杯だった。

『僕は君に一目惚れしてもうた』

「有り得ねぇ!!」

堪らず大声をあげてしまった。
皆が皆、日番谷の方を見た。

「絶対有り得ねぇ…」

男子高と言うのはこうもゲイが多いのか?というかゲイばかりなのか?
考えながら自分の教室へとトボトボ歩いて行った。


***

入学式が終わり、親と一緒に帰って行く者や新しい友達と話をしたりしている中、日番谷は今朝あった市丸に捕まっていた。

「あの、俺帰りたいんですけど…」

「少し位僕と一緒にお話しよ?」

「それは良いですけど、何故この場所?」

今日番谷がいるのは理科室の奥、準備室。

「部室やよ。僕、科学部入ってるんよ」

「でもわざわざここに来る必要は…」

「二人きりがえぇもん。な、冬獅郎くん?」

壁際に追い込まれるように市丸は日番谷に近付く。

「あ、あの…せめて座りませんか?」

「ああ気が利かんくてごめんなぁ」

椅子を出されて座ったは良いものの

(近すぎる…)

市丸と日番谷との距離は20センチ程。
逃げようにも壁に当たり逃げられない。

「まず自己紹介しよ?僕は今朝言った通り市丸ギンや。僕の事はギンって呼んでや。好きなのは日番谷冬獅郎くん。嫌いなのは冬獅郎くんの近くにいる人や。さ、次冬獅郎くんの番やで。」

勝手に自己紹介し、無理矢理やらされる。
仕方なく、日番谷もすることにした。

「日番谷冬獅郎。」

名前だけの自己紹介を。

「それだけ?」

「後は市丸先輩が知ればいいんじゃないですか?」

自分の事を市丸に話す義務なんてない。

「じゃあまず冬獅郎くんの事、冬獅郎って呼んでえぇ?」

「…ご自由に」

別に人から何と呼ばれようがどうでもいい。

《2年B組の市丸ギン君、至急職員室まで来てください。吉良先生がお呼びです。繰り返します…》

「……職員室に行ったらどうですか?」

校内放送で呼ばれた当本人は、面倒くさそうな顔で溜め息をついた。

「また小言聞かされるんや…。まぁしゃあない、また明日な冬獅郎」

「はい」

職員室へ行く市丸の後について準備室を出た。
鞄は持ってきていたので、そのまま昇降口へと向かった。

「なんか今日は疲れたな…。だいたい男の俺に一目惚れなんかするなっての」

愚痴を言いながら、帰路へとついた。
途中コンビニに寄って、昼ご飯を買い家に帰った。
鍵はしっかり掛けたはず。
なのに、ドアノブを回すとすんなり開いた。
泥棒か?と思うも、ゆっくりと家の中に入ると…

「あ、おかえり冬獅郎」

市丸ギンがいた。

「なななななんでお前が!?」

「『な』多すぎやで。今日から僕と暮らそvvだいたい、こんな可愛えぇ子に一人暮らしなんて物騒やん?」

「なんで俺の家知ってんだよ!!」

「吉良先生を脅したに決まっとるやん。」

鼻唄混じりで昼ご飯を作っている市丸に驚いたももの、何を言っても出ていきそうにないなと今日はこのまま家に居らせる事にした。
それが間違いだった。
夜になっても帰りはしない。
結局、朝までひとつ屋根の下だった。
朝登校するときも一緒。
昼休みはもちろんのこと休み時間まで日番谷の教室に来る。
ただ学年が違うのが幸いだ。
クラスの奴からは、市丸先輩と出来てるんだろ。なんて言われるしストレスも溜ったもんじゃない。
これから市丸が卒業するまでの2年間はこのストレスと戦わなければならないのかと思うとうんざりだった。
いつの間にか敬語も抜けていて。
でも変わらないのは市丸の口癖。

「絶対君をおとしたる」

絶対に落ちるもんか。
日番谷はそう決めて、毎日を過ごしていった。

余談だが…半年程たったある日、結局おちてしまった日番谷だった。





END 07.06.19