ファーストキスの場所 The place of the first kiss
午前7時20分
「市丸〜迎えに来たから早く出てこ〜い!!」
朝から大声で名を呼ぶのは市丸の幼馴染み。
少し小柄だがこれでも市丸と同じ高校2年生の日番谷冬獅郎。
毎日学校に行く時に迎えに来てくれる。
市丸とは家族とかには内緒の交際をしてたりもする。
「あ〜!!ちょお待って!!」
日番谷と市丸は家が隣通しで、いつも朝日番谷が市丸を迎えにくる。
これが日課になってから早6年。
恋人同士になれたのは2年前。
「……遅い!!」
「ごめんな〜。」
「言い訳しないから許す。」
「おおきに、冬獅郎」
けれど、体を繋げるどころかキスさえもまだやっていない状態。
そんな純粋な恋人同士だった。
今日この時までは。
「冬獅郎。あの〜な、あの〜」
「なんだよ。気持悪ぃ…」
「(°□°;)き、気持悪い!!??」
少なからずショックだった様子の市丸。
「で、なんだよ?」
「そのな?明日休みやし、今日僕の家に泊まりに来ん?」
今日の夜から親が居らんから。と付け足して、何気無く日番谷を家へと誘った。
なんの疑いもなく、日番谷はあっさりと了承した。
それから放課後までの時間は市丸にとってあっという間に過ぎた。
午後5時40分
放課後、鞄を持って日番谷の席へ行く。
「冬獅郎帰ろ?」
「あ〜ちょっと待って。俺今日日直だから、日誌を先生に持って行かないと…。」
「なら、ここで待っとくから。はよ先生捜して渡してき?」
「おう、サンキューな。すぐ戻るから。」
日番谷はそう言って日誌を持ち教室を出ていった。
特に何もすることがない市丸は、日番谷が戻ってくるまで何をしようか考えていた。
日番谷は最初に職員室へ向かったが担任の藍染は今図書室にいると同じく先生の浮竹から聞き、図書室へと向かった。
「あ、いた。藍染先生、日誌です。」
「あぁ、日番谷君かい。ありがとう。」
日誌を手渡し、日直の仕事は終わったと図書室を出ようとした。
しかし、それを妨げるかの様に藍染が日番谷の腕を掴んだ。
「まだ何か?」
「いや、前々から気になってはいたんだが、どうも邪魔する人がいてね。」
「はぁ…。」
「意味、わかってないようだね。こういう事だよ…日番谷君」
図書室の普段人が読まない本棚の方へ連れこまれ、藍染が顔を近付けてきた。
「せんせ……」
「何してはるんですか、藍染先生?」
唇と唇がくっつく寸前で日番谷の幼馴染み市丸が来た。
藍染はその声で顔を離し、市丸の方を見た。
「君か、市丸君。何か用かね?」
「それはこっちの台詞です。日番谷はんを返して下さい。」
「嫌だ。と言ったら?」
「日番谷はんが嫌じゃない言うならそのまま続けたらえぇですよ。…けど、日番谷はんは僕のものですから断る可能性100%ですわ。」
いまだ何が起こったか理解出来ていない日番谷はボー然と二人のやりとりを見ていた。
「冬獅郎、藍染先生とキスするのはどうなん?」
「え、キス?」
「わからんかったん?あんなに顔を近付けられて。」
「………」
黙りこんだ日番谷に対して市丸は優しく日番谷を包みこんだ。
「ごめんな。怒ってるわけやないよ。」
「……」
「藍染先生とキスするのは嫌?」
「…嫌だ」
小さい声だがはっきりと聞こえた否定の声。
「聞きました?藍染先生。日番谷はん、嫌言いましたよ。」
「そんなの、君が促したにすぎないよ。退いてくれたまえ。」
「日番谷はん、いや、冬獅郎を嫌な思いにはしとうありまへん。あんた先生にはしっかりと見せ付けてやりますよ。」
市丸は日番谷の頬を両手で包み、日番谷の唇へ自分の唇をあてた。
「ん…」
息を吸うために開いた唇を逃さず舌を滑り込ませ、日番谷の舌と絡ませた。
「…ふ………ぁん…」
暫くして口を離せば、銀色の糸が日番谷と市丸を繋いだ。
「どうです?これでも、冬獅郎に手を出す気ですか?」
「…ふん。どうやら、今日はついていない。帰らせてもらうよ。けど、諦めてはいない。」
そう言って、藍染は図書室を出ていった。
図書室に残されたのは日番谷と市丸のみとなった。
「冬獅郎、ごめんな。こんなところでキス、しかもファーストキスしてもうて。」
「…いや、いい。先生なんかとしなくてすんだし、市丸にやってもらって嬉しかったから。」
「それならよかった。本当は、本当の事言うとな、今日家に冬獅郎誘ったのは…」
「ヤる予定だったんだろ?」
「わかってたん?」
「ん…。」
けど恥ずかしかったからと付け足して日番谷は顔を紅く染めた。
「じゃあ、家帰ったら…」
「いいよ。好きにして。」
「おおきに。」
ファーストキスは図書室で。
初夜は市丸の家で。
ファーストキスは予想外だったけど。
市丸と日番谷の交わりは始まったばかり。
END
07.03.18