正夢 a prophetic dream
「市丸―っ!!」
「っ冬ー!?」
――ピヨッピヨッ………
市丸は上に手を伸ばした状態で目が覚めた。
「ハァ、ハァ…夢?」
嫌な夢を…見た。とても嫌な夢を。
市丸は汗をかいていた。もちろん暑いからではない。夢の…せい。
「変な夢…見てもうた。冬が僕をかばって…」
それから…覚えてへん。
「市丸ー」
ビクッ…
日番谷の声にびっくりした。
「市丸、朝だぞ!!起きてるか?吉良が困ってんぞ!!入るぜ?」
「あっ冬。…うん、起きてはるよ。おはよう…。」
声に元気がない。
「?市丸?何かあったのか?」
「ううん、何でもない。さぁ、冬が起こしにきてくれたさかい起きようかなっ」
「市丸…?」
日番谷に心配はかけられない。ましてや、あんな夢を見てしまった後には…。
「どしたん、冬vV僕のこと見つめっちゃって、寝起きの僕の顔に見とれたん?」
「な、違げぇよ…///」
「あはは、冬は可愛えぇなぁ♪」
あんな夢は早く忘れてしまうに限る。
早く…。
***
何故かこんな日に限って合同演習とは。
「イヅルはあっちの方を…」
「わかりました。」
「…市丸、死ぬなよ。」
「何言うてんの?大虚ごときにこの僕が死ぬわけないやん。」
「それもそうだな…。けど今日の市丸なんか様子が変だったから…」
「心配してくれておおきに。でも何でもあらへんから。冬も自分の隊を指揮し。乱菊が待っとうよ…」
「……あぁ。じゃ後でな…」
***
「…ハァ、ハァ…ッ…。くっ」
ちょっと油断してもうた…。まさか大虚がこんな、気配消せる能力持ってるやなんて……。
「っく…」
「――市丸危ねぇー……っ」
「―冬っ…!?」
脳裏にあの「夢」がよぎった。
あの夢だ…。あの夢の続きでも見るように、目の前には、真っ赤な…「血」が…。
それは大虚の血と、日番谷の…血。
「冬獅郎ーーー!!」
日番谷は市丸をかばって…。
大虚は死んだ。日番谷が倒した。
日番谷は…?
「ハァ、ハァ、っハァ…」
生きとる。
しかし出血量がひどい。
市丸は動きたくても動けなかった。早く止血しないと日番谷が危ない…。
でも動けない。どうして?
「市丸隊長!!」
「ギンっ!!」
吉良と松本が日番谷の後を追ってきた。
「大丈夫ですかっ?」
「うん…。僕は大丈夫…。でも、冬…が…」
吉良と松本は日番谷の方を振り向いた。
「隊長!?しっかりしてください!!四番隊を呼んで来ます。吉良、隊長の止血をお願い…」
松本は四番隊を呼びに行った。
「日番谷隊長っ!!大丈夫ですか?早く止血を…」
「ハァ、ハァ…い、ちまる…、…は…?」
日番谷は自分の怪我より先に市丸の心配をして、市丸の元へやってくる。
「市丸隊長は大丈夫です。日番谷隊長、貴方のお陰…」
「そうか…。よかっ…た…」
ドサッ……
「日番谷隊長っ!?」
「冬っ!!」
市丸と吉良が同時に叫ぶ。市丸はやっと動けるようになった。
「冬っ、冬獅郎!!」
日番谷の元に駆け寄って必死に名前を呼ぶ。
「ハァ、ハァ…」
息は…ある。
生きてる。
よかった。
本当によかった。
早く止血を…。
「…ハァ、…ハァ…。」
止血は済んだ。日番谷は気を失っているだけ。呼吸もだいぶよくなっている。
これなら大丈夫や。
きっと…大丈夫……。
早く目を覚ましてや、冬獅郎…。
「んっ…市丸?…っ」
日番谷が目を覚ました。
「冬っ!!大丈夫!?よかった。生きてて…」
市丸の目には大粒の涙が溢れていた。
「…っお前…の、涙…初めて見た、な…っ痛…」
「冬獅郎しゃべったらあかん…。心配したんやから。もう、あんなことは二度としたらあかん…」
あんな思いはもうしたくない。
「う…ん。っ…はぁ、…ハァ……」
日番谷は喋るのも辛い様子で。
「…でも、おおきにな」
日番谷はこの言葉は聞いたのだろうか。再び、気を失っていた。
あの夢は正夢だったのかもしれない。
夢がこれからあることを伝えるかのように…。
こんなことなら、総隊長に無理を言って隊を変えて貰うべきだった。
後悔してももう遅い。
日番谷は重傷を負ってしまった。僕のせいで…。
…でも、生きてて…よかった。
冬獅郎が再び目を覚ますときには、必ず僕が傍にいる。
必ず……
END
06.12.01