幸せの時 at the time of happiness




「冬、月見に行こや!!」

いつもの突然な発言にはもう慣れた。

「月?月見て何するんだよ。」

どうせまた月見酒とか言って酒飲むんだろ?

「もっちろん、決まってるやんvV月見酒♪」

やっぱり。今のこいつの頭には酒の事しかないのか…?

「…またかよ…。ったく。で、どこで月見るんだ?」

別に嫌でもないから、結局付き合ってしまう。

「あの大きな桜の木がある丘で一緒に見ようや♪」

市丸って月が見える夜にはいつも誘って来るんだよなぁ…しかもいつも同じ場所。

「ん。じゃ行くぜ?」

「あぁ待って、冬」

「まだ何かあるのかよ?」

もしかして、また、いつものあれか?

「手…繋ごvV」

やっぱり。

「手、繋ごってオレは子供じゃねぇ…」

市丸は絶対に、夜の道は手を繋ぎたがる。

「はは、そんなふうに思ってないよ、ただ僕が冬の存在を感じていたいだけやもん。やから、ねっ?」

夜だけ?

「でも昼間は手繋がないじゃないか…」

っても昼は恥ずかしいけど。けど…、オレは夜しか必要ないのか?

「それは…昼間は冬の姿がはっきり見えるけど、夜には見えなくなってしまうもん。」

市丸……。

「大丈夫だって、オレはどこにも行かねぇよ」

お前を置いていくわけないじゃないか。

「…ありがとうな。冬」

「んっ…手……」

結局、市丸と手を繋いであの丘へ。

「おおきに…」

いつもと変わらない毎日。変わるのは、人の心かもしれない。

「あぁ…」

でも、その、人の心が変わるまではずっとこのままでいさせて…。

「月…綺麗やな…」

オレは今が一番幸せだから…

「そうだな…」

これからも市丸の傍に…この幸せの時と…――





END 06.11.11