暑い日 a hot day




「ひっつがやは〜んvV」

暑い夏の昼下がり。
何時もの声が十番隊隊舎に響く。

「帰れ。」

日番谷は振り返らず、返事をする。

「酷っ!!折角暑い中此処まで来たんやで!?」

暑いなら来るなよ。
心の中でそう思うが、言いたくはない。
実際来てくれて嬉しい。でもプライドが高い日番谷にとってはそんな事言えるはずかない。

「だから?」

つい冷たく言ってしまう。

「抱き締めてくれてもいいんやない?」

「…何で?」

「何でって…。……?冬、もしかして体調悪い?」

市丸は日番谷の異変に気が付いた。
何時もは、抱き締めてと言うと、氷輪丸を手にする。なのに今日はそれがない。

「別に…」

「嘘。」

そう言うと市丸は瞬歩を使って日番谷の側に行き、額に手を触れた。

「熱、あるやん。」

「…部屋が暑いだけだろ。」

いかにも平気そうに言うが、実際日番谷の顔は赤い。
仕事も普段なら半分は終わっているが、今日は4分の1ぐらいしか終わっていない。

「っわぁ!!」

市丸は日番谷を抱き上げて、執務室の奥にある仮眠室に連れていく。

「ちょっ…!!市丸!!何すんだ!!まだ仕事が…」

「冬!!」

ビクっ…

市丸の声にびっくりした。

「冬…僕な、冬が心配なんよ。」

「っでも仕事が……」

自分の体より、仕事を心配する日番谷に市丸は悲しそうな顔をした。

「仕事なんて後でええやん。冬がそない無理しとうとこなんか見たくあらへん。な、わかってや。冬。」

「………」

「冬?」

市丸のあんな顔を見てしまった後に否定なんてできるはずがない。

「…ん。わかった…。けど…」

「けど?」

「いち…ま…るが…」

日番谷の意識は途切れた。それだけ無理していたのだろう。

「冬?…やっぱ無理しとったんやね。ゆっくり休んどき。…でも気になるわぁ〜。僕が何なんやろか?まぁ起きてからの楽しみにしとこvVその前に四番隊呼ばなあかん。」


***

「熱中症ですね。軽く脱水症状も出ているようなので目が覚めたら水を飲ませてあげて下さい。」

四番隊の子が言うには熱中症やったらしい。氷雪系の日番谷にとって、夏の暑さに参っていたようだ。

「わかったわ、おおきに。」

「それでは失礼します。お大事に。」

扉が閉まった後、市丸は日番谷がいつ目が覚めてもいいように冷たい飲み物を用意しようと立とうとしたとき、日番谷が目が覚ました。

「ん…。ここ…」

「冬、目ぇ覚めた?」

「ん。」

「大丈夫?今、水持って来てやるさかい、ちょお待っとってや。」

「…う?…ん。」

まだ目が覚めてないのか曖昧な返事。
市丸は直ぐに水を持って来て日番谷に飲ませた。

「あ…りがと。」

「ええよ。冬は相変わらず暑さに弱いんやね、熱中症やてよ。」

「暑いから仕方ねぇだろ…」

「でも水分はちゃんと取らないかんよ。脱水症状まででとったさかい」

「ん、気を付ける…」

「まぁ、もし冬が水分補給忘れとったら僕の唾液で冬を潤したるわ」

「ん、」

素直な日番谷に多少驚くが嬉しかったのか、凄く顔がにやけていた。
そしてそのまま日番谷の唇に自分の唇をのせる。

「ふっ…ん…」

日番谷は抵抗せずに受け入れた。
市丸はそれをいいことに、僅かに開いた隙間から舌を滑り込ませ歯列をなぞり口内を犯していく。
しばらくすると、どちらとも言えない唾液が日番谷の顎を伝っていく。

「ふ…っ…はぁ、はぁ」

日番谷はキスの余韻に浸りながら肩で荒く息をする。

「冬、ほんま無理したらあかんよ。この体は冬だけの物やあらへんのやから…」

「じゃぁ俺の他に誰のもんなんだよ?」

「もちろん僕の物に決まってるやな…」

ドカッ!!

「っ〜〜痛いやないの〜」

「お前が変な事言うからだろ?」

日番谷は市丸の腹を蹴った。いつの間にか本調子に戻っていたらしい。

「そないな事言わんといてやぁ〜何回も体重ねた仲やないの〜」

ドカッ!!

またもや市丸の腹にクリーンヒット。

「///なに言ってやがる!!」

「痛〜い。本当の事やないかい!!あっ、そう言えば冬が気ぃ失うまえに言おうとしてはった事て、僕がなんなん?」

市丸は密かに気にしていた事を聞いた。

「…俺なんか言ったか?」

しかし、日番谷は全然記憶にないらしい。

「…覚えてへんの?」

「全然。」

市丸はガックリと肩を落とした。どんな言葉を想像していたのだろうか。

「お、おい市丸?」

「…しくしく」

どれだけ落ち込んでいるのだろか。

「市丸悪かった…。」

日番谷も何気に反省。

「…いや、仕方あらへん。冬体調悪かったんやからな。無理して思い出さんでええからな。もうちょい寝とき。」

そして日番谷をもう一度布団に寝かせ、立ち去ろうとしたとき…

「あっ…。此処に…いて…?ギ…ン///」

本調子に戻っていると言うのに、この可愛らしい声。
もとい、下の名前で呼んでくれた事に市丸は頬を赤く染め日番谷の側に戻った。

「冬…今本調子やよね?もう一度名前呼んでくれたらおってやってもええよvV」

「…ならいい///」

日番谷は今自分が言った事を思い出し、再び顔が赤くなった。

「や、嘘や嘘。本気にせんといて!!」

「…もういい…。」

「ふ〜ゆ〜ぅ…」

「…zzZZ…」

「寝てもうた…」

しかし日番谷の手はしっかりと市丸の死装束を握っていた。

「卑怯や…こんなん///」


夏は暑い。
が、この十番隊舎には夏の暑さに負けない熱い日を送るのであった。





END 06.10.13